第36章 危機
「今誰も使っていない工場なんですけど、川島とか向坂って言う人が使っているところです!」
名前を聞いて林さんはピンときたようだった。
「わかった。今行くから待っとけよ。幸い俺ん家はそっから近い。」
そう言って林さんはすぐに電話を切った。
再び私は工場の中へと入る。
「何だよ、面白くねぇなぁ。まだまだこっからって言ってんのによぉ。」
入り口から見ると、向坂は日代君に殴り続けている。
日代君は顔を腕でガードしていた。
でもダメージはそうとう大きいようで、日代君の顔は歪んで見える。
何か私も力になれないかな。
思わず周りを見渡すと、鉄パイプが落ちていた。
…。これで闘ったら日代君を助けられるだろうか。
でも…。人を殴りつけるのはやっぱり恐い。
でもやらなきゃダメだ。私は鉄パイプをしっかりと握り直す。
林さんだって来てくれるけれど、私も力になりたい。
日代君を守りたい。
そう思うのに手の震えが止まらない。
歯を食い縛り、その場から向坂の元へと走ろうとした。
でもそのとき、誰かに肩を捕まれた。