第36章 危機
「いくら雅が心配だからってはやまんなよ。そんなことしたらもうお前、取り返しがつかなくなる。」
と大学生くらいだろうか。茶髪に染めて、爽やかな雰囲気を漂わせる青年が立っていた。
スマホから聞こえてきたものと同じ声だったので、ああ、この人が林さん何だとすぐにわかった。
「でもっ…。日代君今…。」
「大丈夫。」
一方的に攻撃されていて、大変なんです。
と言おうとしたら、林さんに話を遮られる。
「俺が加勢しに行くから。ただ、お前は俺たちがここを出るときに素早く逃げれるよう、日代を運ぶときに手伝って欲しい。」
「はい。」
そうだ、林さんは雰囲気ではわからないけれど、とても喧嘩が強いんだった。
日代君が一番尊敬していて、頼りにしている人。
私も彼を信じて脱出するときのことを考えよう。
林さんが向坂の方へと歩いて行く。
私はその後ろ姿を見ながらぎゅっと手を握りしめた。