第36章 危機
ひとまず祐希君に電話しよう、と思ったとき、ケータイが震え、誰かから電話がかかってきた。
ナイスタイミングと言うべきだろうか。
名前を見ると、゛林さん゛と表示されていた。
林さんって確か…。日代君の前にred crashのリーダーをしていて、日代君がとても尊敬していた人だ。
会ったことは無いけれど、神業的過ぎるタイミングに電話をかけてきてくれた林さんに感謝する。
電話は外でした方がいいだろう。
きっとこの場で電話をしたら、向坂に妨害されるに違いない。
私は出口に向かって走り出す。
ごめん、日代君。
すぐに帰ってくるから。待ってて。
私は通話ボタンを押して
「はい。」
と電話に応えた。
「お前、雅じゃないな?誰だ。」
いきなりドスのきいた声が聞こえてきて、思わずケータイを落としそうになる。
雅と言うのは日代君の愛称だろう。
「助けてください、緊急なんです。日代君が…。日代君が危ないんです!」
慌てすぎて、日代君が今とても危ない状況にあることしか言えなかった。
でもその人は落ち着いて聞いてくれて、
「雅は今どこだ?」
と静かに尋ねてくれた。