第36章 危機
「お前、落ち着け。川島さんが言ってたこと破るつもりかよ⁉」
銀髪の男があわてて向坂の腕を掴んだが、向坂はそれを勢いよく振り払った。
銀髪の男は勢い余って尻餅をつく。
「お前が何を無くして足洗ったかは知らねぇけどよぉ!俺はお前に何度も負けて、めちゃくちゃ腹立ってんだよ!そのうえ川島さんまでやられちまって…!やってられっか!おい、お前勝負しろよ」
…。向坂の言い分は理不尽過ぎる。しかも日代君は今、川島と闘った後でふらふらだと言うのに。
「だから向坂、落ち着けっつってんだろ。川島に後で何言われるか…。」
再び銀髪の男は向坂に近寄ったが、向坂は銀髪の男のみぞおちに拳を叩きいれ、のしてしまう。
「グハッ…!」
銀髪の男が血を吐いて倒れる様子を見て、私も吐きそうになる。
「悪いけど、今日はここら辺にしておいてくれねぇか。お前に構っている程俺は暇じゃねぇんだよ。」
そう吐き捨てて日代君が私の方に向かってくる。
だが、向坂は拳を振り上げて走りよってきた。
「…!日代君!」
日代君が殴られる…!と思ったとき、日代君は振り返って片手で向坂の腕を掴み、殴られるのを阻止した。
そして腕をそのまま振り払うと、向坂はよろめく。
「ここら辺にしておけっつっただろ。てめぇ…。」
日代君は荒い息を整えようとしている。
そのとき、向坂はポケットから小さなナイフをとり出し、日代君に投げつけた。
そのまま日代君の懐へと飛び込んでいく。
日代君はナイフはかろうじて避けたけれど、その後の向坂の行動には間に合わなかった、思い切りみぞおちを殴られてしまった。