第35章 もう一度
私は川島の返事に泣きそうになった。
どうして日代君は闘うことから逃げられないんだろう。それも、誰かを人質にとられて日代君が嫌だと思っても強制的に闘わされる。
「わかった。んじゃやり合う前に俺のダチを返してくれねぇか。」
「わかった。」
銀髪の男と向坂の二人が、私に噛ませていた猿ぐつわと手首のロープを外し、あっさり解放する。
目的は果たされたから返してもらえたのかな。
自分が弱いことをどうしようもなく自覚させられてつらい。私がこの人たちに対抗する力を持っていれば、日代君が喧嘩することもなく、私が叩きのめして逃げてしまうのに。
私は日代君のもとへと駆け寄った。
「ごめん、日代君。」
「謝ることぁ、ねぇよ。どちみちこいつとはやり合う予感はしてたんだ。それがちょっとばかし早くなっただけだ。むしろ俺の方が謝んなきゃなんねぇ。毎回巻き込んで本当に申し訳ない。」
私は唇をぎゅっと噛み締めて首を横に振る。
そうでもしないと泣いてしまいそうだった。
「悪いけど、これ持っててくれ。」
日代君は私に鞄を渡し、首や腕を回す。
今から彼らは本当に闘うんだ
私は日代君に渡された鞄を思わずぎゅっと抱き締めてしまった。