第34章 まさかこんな時に
「すいません、私帰りたいんで通してください。」
私がそう言って前に進もうとすると、向坂に腕を掴まれた。
「俺もあんたと話したいことがあるんだけど?」
そして私はジリジリと周りの不良達に追い詰められていく。
「手短にお願いできる?」
もしすきがあったら逃げなければ。
周りに目をやりながら私は身構える。
「それは無理だね。だって日代のことで話したいことがあるんだから。」
「日代君とは今は特に関わっていないからお引き取り願えます?」
「そんなこと無いでしょう。だって俺、あの日見たしね。君たちが一緒にゲームセンターにいて、その後バイクで二人乗りして帰るの。」
撒けたと思ったけど、あの後まだ追いかけていたんだ…。
「それに俺、君の家もわかっちゃったんだなぁ。だから君が拒否したらどうなるか…。わかる?」
「逃げてもきりがないってこと?」
あと一つ、嫌な可能性が浮かんだけれど、実現しては嫌なので口には出さない。
「それもそうだけど、君の家族がどうなっても知らないよ?」
私の恐れていることは見事に当たってしまう。家族は巻き込まないで欲しいと思っていたが、そうは行かないらしい。
私が怯んだのを見て、向坂は喉の奥で笑う。
「さて、宮原さんには眠ってもらおうか。」
そう言われた瞬間、何か体に衝撃が来て、私は意識を失った。