第34章 まさかこんな時に
お母さんに頼まれたお醤油を見つけて、そのまま私はお菓子作りのコーナーにいる。
うーん、やっぱり無難にクッキーとかから始めるべきかな…。でも日代君ならクッキーとか自分で作ってそう…!それも私よりももっとクオリティの高いものを…!
クッキーを作るならこれ!とうたっている袋を手にとってため息をつく。
女子力の高い男子を好きだと大変だな。
とりあえずまた探しに来ようと思い直し、私は醤油のボトルをレジに持っていく。
それにしてもお母さん、よく醤油なんて重いやつ頼んできたな。
レジ袋で運ぶと手で運ぶよりもずっと、ずっしりと重みを感じる。
私はスーパーを出て空を見上げた。
まだ朝の10時だ。これからだんだん熱くなっていく。
早く帰ろう。重いものを持って炎天下の中を歩くなんてとんでもない。
と、そのとき私の周りを背の高い男子が取り囲む。
チェックのズボン。この柄の制服は見たことがある。ということは…。
真正面に立っていた男子の顔を見ると、やはり向坂だった。
「元気にしてた?宮原さんよぉ。」
向坂はあの嫌なにやっと口を横に広げる笑顔を向けた。
スーパーだから来ないとかそんな油断しちゃダメだったんだ。
私は血の気が引いていくのを感じた。