第30章 帰り道
「事情があるから俺は誰とも付き合わねぇつった。」
「その事情は全部話したのか?」
多分日代のお母さんのことなんだろうけど。
「おう…。」
「それでお前は何でそんなに浮かない顔をしてるわけ?本音を言ったんでしょ?」
「…。なんつーかよ…。宮原を傷つけたかなと思ってな」
あきれた。こいつが本当に恋愛に関しては疎くて、必要以上に情にあついのは知っている。
だけど…。
「あのね、ふられて傷ついたりショック受けないやつなんていないよ。何もショックを受けないやつは本気で好きと思ってないからね。だから相手に本音を言って断るのはダメなことじゃない。でもな…。そのことをずっと引きずって気まずそうにしてたら宮原さんも居づらいだろ?そっちの方がひどいでしょ。」
うつむきながら砂利道を踏みしめて歩く日代。
いつもより暗いと思ってしまう。
「そうだな…。」
「じゃあ何で日代はそんなに浮かない顔をしてるわけ?祐希の話に納得してもその顔じゃん」
神崎もズバリと指摘する。
「日代。まさかお前、宮原さんのこと好きなの?」
俺の言葉に勢いよく顔をこちらに向ける反応で、俺は確信してしまった。
こ い つ は 彼 女 の こ と が 好 き な ん だ 。
「…っ!」
珍しく顔を赤くして、ピュアな反応を見せてくる。
「それで宮原さんには自分がこれからもお前とは付き合えないって言えた?」
俺は肝心なところを聞くことにする。
「言ってない…。」
「日代、それ最低だよ。宮原さんのことだからお前のこと何年だって待っちゃうよ。お前が昔のことから解放されるまで。そんなの酷いよ。みんなが青春してるなかで彼女一人だけをそんな何年も待たせるような目にあわせて。」
相手が待ち合わせに遅れたら、宮原さんはいつまでも待つ性格だろ?
そんな子に自分の人生のために、何年も待たせちゃダメだろう。