第29章 彼の過去と後悔
「そんで今も髪が赤いままなのは、俺が家族を放ったらかして人に怪我を負わした上に、親の死に目に会えなかった親不孝者だっていう戒めだよ。」
戒め…。
その戒めは世間から白い目で見られ、大人たちには反感を持たれ、不良たちには憎しみを持たれるというつらい物がついてきた。
日代君はもうリーダーではないのに、どうして髪が赤いのだろうと思っていたけれど、日代君はオシャレとか、目立つためではなくて自分のしてきたことをすぐ思い出せるようにしていたんだ。
「仲間を守る!つって走り回っていたやつが、一番近くにいるはずの家族を守れなかったんだ。情けなくてしょうがねぇよな。だから俺は決めたんだよ。俺は1つのものしか守れねぇ。だから家族を守るために他は守るものは持たねぇって。」
そう呟く日代君の顔は酷く寂しそうに見えた。
「友達は…?」
「それを決めたとき、俺の友達は祐希しかいなかった。祐希は自分で守れるから大丈夫だったんだよ。」
そう言うけれど、日代君は私を助けてくれた。
守れないっていうのは、力がないんじゃなくて余裕がないんだ。
それに…。
そのことを決めたのは、日代君自身。
そしてそのことをやりとげてきたのも日代君自身。
「日代君。」
「なんだ?」
「私も日代君の力になりたい!」
「え?」
「日代君の守りたいもの、一緒に守りたい!家族とか友達とか…。日代君は一人で何でもやりすぎだよ。だから何かあったら絶対力になるから、教えてね。」
私は日代君を見上げながら力を込めて話す。
「私に日代君を守らせて!」
私がそう叫んだ時、日代君は吹き出した。
「?」
「悪い、悪い。まさかそんな勇ましいことを言われる日なんて来ると思っていなかったから。…。でもありがとな。次からはそうする。」
日代君は笑いすぎて腹いてぇと呟きながら涙を拭った。