• テキストサイズ

私達は偽者シンデレラ

第27章 打ち上げ花火


「…遅かったか…。」


観覧席として、地面に敷かれていたブルーシートはもう、人でいっぱいになっていた。



「もう少し早くから向かっていれば間に合ったかもね。」



「まぁ、しょうがねぇよな。こんなに人が来てんだから。」


他に見れる場所無いのかな。


この辺りの地図を頭で思い描いていると、ある場所が思い浮かんだ。



「神社!」


「ん?」


「神社の境内からだったら見えるかも。」


お正月にお参りする場所。でも少し階段が多くて、境内にたどり着くまでがかなりしんどいと思う。


「確かに、あそこからなら、花火の見える方角だし、高い場所にあって遮るもんも何もねぇな。ただ…」



日代君が私の方に視線を向ける。



「その格好で石段上んのはきつくねぇか?浴衣に草履は動きにくいだろう」


「大丈夫!こう見えても結構体力あるんだからね。」


私が腕を曲げて力こぶを作ると、日代君は笑う



「せっかく綺麗にしてんのに、そのポーズはダメだろ。」


綺麗、という単語のせいで、頬が熱を帯びるのがわかった。


「まぁ、誰もいなかったら石段の途中でもいいか。んじゃ行くぞ。あと打ち上げまで10分あるしな。」


日代君が歩き出し、私もその後ろをついていく。



そうだ、二人きりになるし、今からが告白のチャンスなんだ。


私の心臓がドクンと音を立てたのが聞こえる。


でも行くときに言って気まずくなったら嫌だし、花火を見た後で言おう。


私は少し臆病になっている自分を励ましながら、神社への道を歩いて行った。



/ 206ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp