第27章 打ち上げ花火
「…遅かったか…。」
観覧席として、地面に敷かれていたブルーシートはもう、人でいっぱいになっていた。
「もう少し早くから向かっていれば間に合ったかもね。」
「まぁ、しょうがねぇよな。こんなに人が来てんだから。」
他に見れる場所無いのかな。
この辺りの地図を頭で思い描いていると、ある場所が思い浮かんだ。
「神社!」
「ん?」
「神社の境内からだったら見えるかも。」
お正月にお参りする場所。でも少し階段が多くて、境内にたどり着くまでがかなりしんどいと思う。
「確かに、あそこからなら、花火の見える方角だし、高い場所にあって遮るもんも何もねぇな。ただ…」
日代君が私の方に視線を向ける。
「その格好で石段上んのはきつくねぇか?浴衣に草履は動きにくいだろう」
「大丈夫!こう見えても結構体力あるんだからね。」
私が腕を曲げて力こぶを作ると、日代君は笑う
「せっかく綺麗にしてんのに、そのポーズはダメだろ。」
綺麗、という単語のせいで、頬が熱を帯びるのがわかった。
「まぁ、誰もいなかったら石段の途中でもいいか。んじゃ行くぞ。あと打ち上げまで10分あるしな。」
日代君が歩き出し、私もその後ろをついていく。
そうだ、二人きりになるし、今からが告白のチャンスなんだ。
私の心臓がドクンと音を立てたのが聞こえる。
でも行くときに言って気まずくなったら嫌だし、花火を見た後で言おう。
私は少し臆病になっている自分を励ましながら、神社への道を歩いて行った。