第27章 打ち上げ花火
「俺もリンゴ飴買うことにしようかな。」
「え、日代君もリンゴ飴食べるの?」
甘いもの好きでも、リンゴ飴食べても私は全然問題ないんだけど、なんか絵面が凄そう。
「いや、妹の土産に。あいつも祭り、行きたがっていたからな。でもまだ背ぇとか低いし、そんな小せぇ体ではぐれたら終わりだからよ。今日はダメだって言っちまったんだよなぁ。」
日代君ってもう、妹さんの保護者みたいだ。
こんな妹思いなお兄さんを持てて、羨ましいな。
明人だって別にいいんだけどね。でも、優しいお兄さんには誰でも憧れるものだと思う。
「そしたら、あいつ脹れちまってよ、だから詫びと土産を兼ねてだな、何かいいもんがねぇか悩んでたんだよな。だから宮原から小さいやつとかイチゴの飴もあるって聞いて安心したわ。」
リンゴ飴のことを話しただけなのに、こんなに無邪気に喜べる日代君を素直に愛しいと思う。
もう少し、背が高かったら良かったのに。そしたらもっと私の大好きな彼の笑顔が少しでも近くで見れるのにな。
「あっ!あそこにリンゴ飴の屋台ある!行こっ!」
私はちょうどお目当ての屋台を見つける。
「え、どこだ?」
「こっち!」
反対側の屋台を見ていた日代君を思わず手をつかんでひっぱってしまう。
リンゴ飴の屋体はなかなか繁盛していて、行列の後ろに着くまで時間がかかった。
「…それにしてもすげぇ人混みだな。」
日代君が周りを見渡したとき、自分が日代君の手をとっていたことを思いだし、慌てて手を話す。
日代君は周りに気を取られていたのか、手を繋いでいたことに何も言及しなかった。
…思わず掴んじゃったよ。
私はまだ彼のぬくもりが残っている手を見つめていた。