第27章 打ち上げ花火
「あいつら、楽しめるといいな。」
日代君は四人の背中を見つめながらポツリと呟いた。
「そうだね。」
「じゃあ俺らもどこか行くか。」
そう言って日代君は歩き出す。いつも私の歩幅にあわせて歩いてくれるけれど、今日は浴衣姿で動きにくいのを知ってか、更にゆっくりと歩いてくれている気がする。
お祭りの会場は人が多くて、少しでも離れると人が間に割り込んでしまい、はぐれてしまう。
だからいつもより近い距離に日代君がいることで余計に胸が高鳴る。
「宮原、どっか行きてぇとこあるか。」
「うーん。リンゴ飴の店に行きたいかな。」
「あんなにでけぇの食えんのか?」
日代君は驚いたらしく、少し足を止める。
「リンゴまるまる1個のやつもあるけど、小さいリンゴ飴も売ってるし、イチゴの飴とかもあるよ。私も大きいのは食べられる自信ないから、イチゴのにしようかなって。」
人混みに揉まれないよう、私達は再び歩きながら会話を進める。
時々歩くときに彼の左手が微かに触れて、そのたびにどこを向いて話せばいいのかわからなくなってしまう。
「そういう小せぇのもあんだな。俺がもっとガキの頃に見たやつはよ、すげえでけぇので、せっかく親に買ってもらったのに食べきれなかった記憶があるな。」
「え、意外。日代君甘いもの食べるんだ。」
辛いの好きそうなイメージがあったな。
「生クリームたっぷり、とかは無理だけどな。洋菓子も和菓子も好きだ。そもそも食べ物に特に好き嫌いは無いから、変なもんとか異常に辛かったり、甘かったりしなければ平気だ。」
良かった。バレンタインにチョコ渡しても大丈夫だ。でもまぁそもそも、渡せるかどうかが問題なんだけどね。