第26章 夏祭り
ガヤガヤと騒がしい人混み。
そのなかを私たち三人は歩いている。
川原の辺りは普段、夜は誰も通らないからか、仮設の電灯がポツポツと申し訳程度に立っている。
その一本道の先を見ると、たくさんの灯りがついていて、笛の音などが聞こえてくる。
この先にお祭りの会場があるのだ。
「今日は楽しみだね。」
由梨花が歩きながらそうポツリと呟いた。
「うん、みんなで遊べるからね。」
しかも自分の好きな人たちとも。去年の今頃なんて、こんなことが起きるなんて、全く想像していなかった。
「私達、ちょうどいい頃合いを見計らって抜けていくから安心して。」
藍那があいつKYだから私が頑張らないと、けなすようなことを言っているのに、何だか楽しそうで、藍那は本当に彼が好きなんだなぁ、と思える。
「うん、お願いします。私も精一杯頑張るね。」
私は力こぶをつくってみせる。
「浴衣なのにそんなかっこうしちゃダメだよ。」
由梨花が笑いながら私の腕をやんわりと下ろす。
「でも第一に思いっきりお祭り楽しもうね。だって今日は一生に一度きりなんだから。」
「うん。」
そうだね。私、朝から緊張してたな。でも、それじゃあ何も楽しめないしね。
「うん、いっぱい遊ぼう!」
私が行ったとき、前に目線を戻すと見覚えのある姿が見えた。
こんなに離れていても、後ろ姿でも誰だかハッキリわかる。
日代君だ。
私の鼓動の動きが急に速まるのを感じた。