第22章 彼の訪問
「いじめられていたやつらが、強くなろうとして集まったのが始まりらしい。何でこの方向に走ったのか、さっぱりわかんねぇんだけどよ、見た目を変えて、体を鍛えて、仲間がいじめられそうになったらみんなで助けに行く。そういう活動をしていたらしい」
最初にこの集まりを考えた人も何かすごいな…。
でも、強い意思を持っていた人たちだったから、そういうことをなしえたんだろうな
「へぇ、初耳だなぁ、今もそれは続いているのか?」
お父さんも興味津々、といった顔だ。
「そうっすね。通りかかったときにボコられてるやつらを助けたり、仲間がピンチなときは加勢したりとか。」
私のときも助けてくれたよね。ほとんど他人に近い私を助けてくれたとき、本当に嬉しかったな。
「でも、どうして今は町の人たちには凶暴な不良グループとか、ヤクザと関わってるって言われてるんですかね。」
明人の疑問には私も話を聞き始めた頃から思っていた。
私も同級生に、目が合ったら最後、とか夜は絶対に外出するな、とか言われた記憶があった
「たぶん、喧嘩の様子だけ見ていた人がそんなことを言ったりとか、喧嘩に負けたやつらが、俺らの評価を落とすために流した噂だろうな」
確かに、事情も聞かずに、喧嘩に負けて倒れている人達と、その脇に立つ赤い髪の男と不良の絵図はなかなかに怖い。
一見、不良たちが人を集団で襲ってボコボコにしたように見えるだろう。
しかも赤い髪なんてひときわ目立つに違いない。
「やー、でも知らなかったですね。red crashが実は正義の味方だったなんて」
おどけたように喋る明人。
「正義の味方じゃねぇよ。」
対照的に日代君の声は暗かった。
「人を傷つけたやつらは、正義の味方じゃねぇ。いじめたやつらも、喧嘩に勝ったやつらも、みんな同じだよ」