第22章 彼の訪問
何でだろう、日代君はたまに、自分を貶すような言い方をする。
日代君の言っていることも確かに理解できるのだけど、もう少しくらい他人を大事にするのと同じように、自分を大事にすればいいのに。
「確かに、正義の味方、ではないかも知れないね。それは、自分達を守るために始めたことなのだから、誰かのために慈善をやっている訳でも無いしね。」
お父さんは日代君の言葉に頷いている。
「でも、正義の味方と決めるのは日代君、君じゃないんだ。助けられた人や、憧れている人は感謝や尊敬の意味を込めて言っている。だから、君の場合はそんなに激しく否定したり、肯定する必要はないと思うな」
まだまだ人生長いんだから、肩の力を抜いたらどうだ?
その後に続けたお父さんの言葉に日代君が黙ってうなずく。
日代君、何を考えているんだろう。何だか昔の話を聞くたびに、自分とは全く違う生活をしてきたんだと実感する。
日代君との距離を感じる。
少しずつ近づいているのかな、なんて思っていたけれど、この16年以上の時間を急に埋めるなんて無理だ。
これから先、ずっと仲良くしていれば、その距離を埋めることはできるのかな。
私は彼の横顔を見つめながら、そんなことを考える。
「そう言えば、日代君はどうしてred crashに入ったんだい?」
お父さんの質問は、そう、私が一番聞きたかった、でも聞く勇気が出なかった質問だった