君を俺だけのものにしたい【Mr.FULLSWING】
第8章 司馬の場合
「ちょっと疲れた!」
飛ばしすぎたらしい××さんの手を引いて、客席の後ろの方に行く。
会場一番後ろの壁際で、俺達は自販機で買って来たジュースを喉に流し込む。
楽しい?
小首をかしげて尋ねると、××さんは満面の笑みを浮かべた。
「楽しいって?うん、楽しい!」
きゃいきゃいとはしゃぐところを見ると、本当に楽しそうだ。
こんなにはしゃいだところ、大会で勝った時以来に見るんじゃないだろうか。
「新しいお友達は出来たし、いい音楽に出会えたし、見た事無い司馬君が見れた!」
見た事無い俺?
その台詞、そのままそっくり××さんに返すんだけど。
「だってー、飛び跳ねる司馬君なんて普段からじゃ想像つかないもん!」
面白そうに××さんに言われて思考を巡らす。
言われてみればそうかもしれない。確かに学校の俺からじゃ想像つかないのかも。
そりゃあ全然喋らないし、みんなみたいに普段はしゃがないけれど。
でも大人しいだけじゃないんだぞ俺は。じゃなきゃ野球なんてやってられない。