君を俺だけのものにしたい【Mr.FULLSWING】
第2章 朝練
ボールも全部拾えただろうかと思い振り返ると、さっきまで無かったはずのボールが大量に転がっていた。
「なんだこりゃー!?」
「そりゃあ今はバッティング練習だから、こっちまで飛んで来るよ。」
さらっと答えて、××はまたボールを拾い始める。
「っつーことは、俺の打ったボールもこうやって飛んで来るわけ?」
「そうだね。練習してるならだけど。」
嫌味を言われ、少しぎくっとする。
怒ってるかと顔色を伺ってみるけど、想像に反して楽しそうな笑顔だった。
「猿野っていっつもぱかすか飛ばすから、あっちの草むらに1つだけ転がってたりするの。」
指差した方を見ると、バッターボックスからここよりさらに離れた校舎奥。
「走って取りに行くのがめんどくさくもあるんだけど、
ここまで飛ばせるなんてすごいって、わくわくもするんだ。」
きらきらした目でそんなことを言われて、不意打ちにドキッとした。
そんなに喜んでくれるなら、××のためにホームランを打ち続けたい。