第8章 四日目の夜
何度かその体温に触れたことはあった。
自分から彼の背中を抱きしめたこともある。
でも、抱きしめられたのは初めてで……。
(あったかい……)
触れた部分から伝わってくる規則正しい心臓の音。
今彼がここに居るという、確かな証明。
緊張がじょじょに解けていく。
(すごく……安心する)
昨夜、トランクスもこんな気持ちだったのだろうか……。
どうしようもない不安が、優しく包まれていく感覚。
「オレも、ユメと離れたくないよ」
耳元で響く心地よい音。
ゆっくり顔を上げると、少し照れた彼のブルーアイに自分が映った。
「何があったか、話して?」
優しいトランクス。
全てを話してしまえば、楽になれるのだろうか?
話しても、どうすることも出来ないとわかっているはずなのに……?
でもせめて、逢えなくなるのなら。
……この想いだけでも……。
ユメはトランクスの腕の中で、ゆっくりと口を開く。
「私、トランクスに……嘘、ついてる」
青い瞳から目を離さずに、途切れ途切れに言葉を紡いでいくユメ。
「え?」
「私、家出してきたわけじゃない」
トランクスはユメの突然の告白に驚く。
背中に回された腕が緩んだけれど、ユメは構わず続けた。
「私……この世界の人間じゃないんです」
「!?」
大きくなった瞳が戸惑いに揺れる。
――当たり前だ。
こんなこと、すぐに信じてもらえるはずがない。
だからユメは、精一杯真剣な瞳でトランクスを見つめた。
「ごめん、ユメ……どういうこと?」
トランクスはユメからそっと手を離す。
消えた温もりに、少し胸が痛む。
でも……全てを話してしまおうと決めた。
トランクスならきっと、信じてくれると……信じて。
この想いだけは伝えたい。そう思ったから……。
そして、ユメは全てを話していった。