第8章 四日目の夜
ドキンと飛び上がる心臓。
「ううん! 私はただ、あの時そばにいたってだけだし……」
確かに、自分の行動が皆に勇気を与えたと知って驚いたし、嬉しかった。
でもそれだけだ。
「トランクスが皆のために今までしてきたことが、やっと実ったってことだよ!」
「いや、きっとユメがいなかったら、今日みたいな日はなかったと思う」
ユメを見つめたまま穏やかな口調で言うトランクス。
急に気恥ずかしくなってユメはぱっと視線を逸らした。
そのまま紅茶に砂糖を入れティースプーンでかき回す。
――今朝のことを思い出してしまった。
“ずっとここに居て欲しい”
……そう言われたことを。
まずい。
ユメはぐるぐるとスプーンを回しながら平常心を保とうと必死になっていた。
でないと、すぐにでも顔が真っ赤になってしまいそうだった。
「母さんもさっき、ユメにありがとうって言ってたけど、オレと同じ気持ちなんだよ。ユメにすごく感謝してる」
「そんなっ」
「言わせて。……ユメ、本当にありがとう」
ゆっくりと視線を上げると、そこにはとても綺麗な笑顔のトランクスがいて。
もう……限界だった。
みるみる顔が赤くなっていくのが自分でわかる。
「……はい」
ユメはそう小さく頷くことしか出来なかった。
「――あと、もうひとつ。言わせて欲しいことがあるんだ」
「え?」
その声音がほんの少し変わった気がして、ユメはもう一度赤い顔を上げる。
酷く真剣な表情をした彼が、思い切るように口を開いた。
「これからも、そばにいて欲しい」
ゆっくりと目を見開いていくユメ。
――いつの間にか、ユメに負けないくらい真っ赤になっていたトランクスが続ける。
「オレ、ユメのことが好きです」