第7章 四日目
「……ユメ」
どこからか、呼ぶ声がする。
すごく、聞き覚えのある声。
ユメは声のする方を向く。
「……お母さん」
そこには、母が立っていた。
父もいる。
親友のミクもいた。
皆、ユメを見つめている。
今にも、泣き出しそうな顔で。
――なんで、そんな顔、するの……?
「……っ」
ユメはぱっと目を開けた。
カーテンの無い窓から、朝の眩しい光が差し込んでいる。
「夢……か」
ユメはまだこの世界にいることにホっとしながら、深く息を吐いた。
気持ちの悪い不安がまだ残っている。
なんだか胃のあたりがざわざわする。
ユメは上半身を起こし、呟いた。
「皆、なんであんな顔……」
――そういえば、向こうで私はどうなっているんだろう?
普通に考えたら、私は今ここに居るわけだから……向こうには、居ない、わけで……。
「……行方不明?」
声に出して言ってから、サーっと血の気が引いた。
……それはマズイよ!
でも、いつか読んだ異世界トリップものの物語では、時間軸がずれていて、例えば、こちらの一ヶ月が向こうでは一日とか……。
「……」
そんなに、都合良くいくだろうか?
……皆、泣きそうな顔をしていた。
喧嘩が絶えなかったお母さん。
でも、……あんな顔、して欲しくない。
「私、いつまでここにいられるの……?」
ユメは小さく呟いて、首に掛かったネックレスを強く、握った。