第6章 三日目の夜
顔を、見られたくなかったのかもしれない。
トランクスがテーブルに肘をつき両手で顔を覆った。
ユメは立ち上がって、トランクスの背中に回る。
その肩が小刻みに震えている。
……トランクスが、泣いている。
ユメは広い背中に腕を回して、強く……抱きしめた。
小さく聞こえる嗚咽が、たまらなかった。
――どのくらい、そうしていただろう。
「あの子の、お母さんが……」
「え……?」
「オレが助けた子のお母さん。オレに、言ってくれたんだ。“ありがとう”って。……何度も」
「……そっか」
「うん」
「そっか……良かったね、トランクス」
「……うん」
この人が、いとおしい。
すごく、すごく、愛しい。
……ずっと、この人のそばにいたい……。そう、思った。
「……ユメ」
「ん?」
「ありがとう、もう……大丈夫」
「うん」
ユメはゆっくりと手を離して椅子に戻った。
見ると、トランクスは照れくさそうに顔を赤くしていた。
ユメもつられて赤くなりながら視線を逸らす。
「……だめだな、これじゃ」
「え?」
「ユメに頼ってばかりで……カッコ悪すぎ」
「そんなことないよ!」
強く否定するとトランクスはやっぱり照れくさそうに笑った。
「ありがとうユメ。本当に……今日はありがとう」
その笑顔はさっきまでの痛々しいものではなかった。
ユメの好きな、トランクスのキレイな笑顔。
嬉しくて、嬉しくて、ユメも笑顔を返した。