第5章 三日目
ユメは顔を真っ赤にしてブンブンと首を振った。
「私は、居候させてもらっている身だし……こんなんで良かったらジャンジャン使ってくださいっ」
トランクスがそんなユメを見てクスクスと笑う。
「ありがとうユメ」
と、その時だった。
「キャ―――!!」
背後で突然悲鳴が上った。
驚いて振り返るふたり。
気付かれてしまったのだろうか……ここまで来て!?
瞬間そう思った。
でも皆こちらに背を向けている。
そして皆、ある一点を見つめていた。指差している者もいる。
その視線を辿っていき、
「うそっ……!?」
ユメも小さく悲鳴を上げた。
屋上から、子供がぶら下がっていた。
その子供――少年のようだ――は、柵の外側、建物の縁に細い両手を掛け全身を支えている。
なんであんなところに……!?
屋上が子供の遊び場になっていることは知っていた。
ふざけて柵を越えてしまったとしか考えられない。
あんなところから落ちたらただでは済まない。打ち所が悪かったら……。
柵の内側で、母親と思しき女性が必死に何か叫んでいる。
数人の大人が助けようと柵を乗り越えようとしているのが見える。
お願い、間に合って……!
だが、一人が柵の外側に降り立った瞬間、少年の体がグラリと揺れた。
複数の悲鳴が上がる。
そして少年の手が……離れた。
「やっ……!」
……まるで、スローモーションを見ているようだった。
落ちていく少年。
そして……金色の光。
(え……?)
少年の落下が止まる。
金色の光に包まれ、宙に浮いている。
そして、金色の光が……一人の青年の姿になった。
「トランクス……」
ユメが小さく呟いた、次の瞬間、
先ほどの比ではない、無数の悲鳴が上った。
……ユメの足元には、さっきまでトランクスが持っていた沢山の荷物が残っていた。