第1章 一日目
あちこちにキズを負って、満身創痍といった風だったが、間違いなく彼は戻ってきたのだ。
ほっとしてユメは建物の壁に体重を預けてヘナヘナと座り込んでしまった。
はぁ~と、今まで緊張でたまっていた空気を全て吐き出すように息をもらす。
ほぼ同時、タッとトランクスが地上に降り立った音が聞こえた。
ドキリと胸が鳴る。
彼の足音がこちらに近づいてくる。
ドキドキドキ……。
どうしよう……。こっちに来る……!
立ち上がろうと思ったが力が入らない。
どうやら腰が抜けてしまっているらしい。
ユメが息を殺していると、足音が真横で止まった。
ゆっくり、ユメはそちらに顔を向ける。
「!!」
憧れの人が目の前にいた。
顔がかぁ~と熱くなる。
トランクスがそんなユメを見下ろしている。
「あなたですか? ……さっき、叫んだのは」
「え! ……あ、はいっ」
おどおどと答えるユメ。
「ありがとうございました」
トランクスが優しく微笑む。
「あなたがいなかったら、オレはあそこで殺されていた」
「あ、いえ……」
「あなたは命の恩人です」
トランクスはそう言って、ユメに手を差し出す。
「立てますか?」
「あ……それが、腰が、抜けちゃったみたいで」
ユメが恥ずかしそうに言うと、トランクスは小さくクスリと笑った。
「手を、出してください」
そう言われてユメはおずおずと手を差し出す。
するとトランクスがそっとその手を握ってくれた。
――その手は温かかった。
確かに、人の温もりが感じられた。
そう思ったとき、知らず、ユメの瞳からは涙が流れていた……。