第1章 一日目
どちらが先に動いたのか、ユメにはわからなかった。
いつの間にか二人の姿がなかった。上空に飛んだようだ。
トランクスはきっと復興しつつあるこの西の都に被害が及ぶのを避けるつもりだ。
空を見上げると、力と力がぶつかり合うようなすさまじい振動が空気を通して何度も伝わってきた。
そして、しばらくそれが続いたのち、金色の光はどこかに飛んで行ってしまった。
ここからでは点にしか見えない、もうひとつの黒い物体が追うように後に続く。
長期戦になることを見越したトランクスが場所を変えることにしたのだろう。
お願い……負けないで!!
飛んでいった方向を見ながらユメは強く祈った。
それから何度か遠くのほうで爆発音が聞こえてきた。
その度、ユメの心臓は鷲掴みされたように苦しくなった。
もう、これが夢でも何でもいい。
ただトランクスが生きて戻ってきてくれることを、ユメは強く願って、目を閉じた……。
……そして、どのくらいの時間が流れただろうか。
一際大きな爆発音が聞こえた。
ユメは祈るため組んでいた手を外し、閉じていた目を開いて遠くの空を見つめた。
忘れていたように、静かな風が頬を撫ぜていく。
どうなったんだろう……。
勝てたのだろうか? それとも……。
ユメは一瞬頭をよぎった悪い考えを消すようにかぶりを振った。
大丈夫。彼は強い。負けたりなんか、絶対にしない!
少しして、ユメが空を見上げていると、こちらに向ってくる黒い物体が視界に入った。
ユメは目を見張る。
トランクス……?
だんだんと、その人物が見えてくる。
空の色に溶け込むような青い服。
そして、風になびく紫色の髪の毛。
間違いない。
ユメは先ほどとは違う胸の締め付けを感じた。
トランクスだ……!