第4章 二日目の夜
「――ヤバイ。眠い」
ユメはベッドから離れた位置に立ったまま呟く。
今ベッドに入ってしまったら10秒で夢の中に入れる自信があった。
またリフレッシュルームに行くことも考えたが、きっとまたトランクスに気付かれてしまうだろうし、それは、彼に悪い気がした。
トランクスは“家出して落ち込んでいるユメ”を遊園地に連れて行ってくれたのだ。
これでまたリフレッシュルームになんて行ったら、トランクスの気持ちを無駄にしてしまう。
チャリ……
ユメは首にかかるネックレスに触れる。
ブルマにバレないようにとカプセルコーポレーションに着いて一度外したのだが、一人になってすぐにまた身に着けたのだ。
冷たいはずの金属が、とても温かかった。
……トランクスは着けてくれただろうか……?
ううん。さすがにそこまで期待したらいけないよね。
ペアの物をトランクスと持っているのだ。こんなに幸せでいいのだろうか……?
買ったときのことを思い出し、キャ~!と真っ赤になりながらその場で身もだえるユメ。
――やっぱりここに一晩中立ったままなのは辛いと、ユメはベッドに腰掛けた。
ふと考える。
「この世界に来て、二日が終わったんだ」
長かったようで、あっという間の二日間。
あと何日、この家にいられるだろうか。
あとどれくらい、この世界にいられるのだろうか。
……戻りたい?
ユメは自分に問いかける。
……。
ユメは首を振って、ぼすんっとベッドに顔を埋めた。
今は、幸せすぎて、戻ることなんて考えられない。
……考えたくない。
「……お願い……もう少しだけ……」
ユメの呟きは、途中から寝息に変わった。
……結局、睡魔に勝つことはできなかったのだ。
ユメはこの世界に来て初めて、熟睡した。
――朝。
眩しい陽の光で目を覚まし慌てて起き上がったユメは、まだ自分が殺風景な部屋の中にいることを確認して、心底、胸を撫で下ろした。
「おはよう」
「おはよう!」
そして今日もトランクスに朝の挨拶ができたことを、心底、幸せに思った。