第3章 二日目
「この方たちがここまで連れてきてくださったんですよ」
先ほどユメたちをここまで案内してくれた職員の男性が言う。
すると、お母さんはこちらの存在に初めて気付いたように顔を上げた。
「本当にありがとうございます! リイナがご迷惑をお掛けしたようで……」
「いいえ。リイナちゃん、とても良い子にしていましたよ。ね」
トランクスが訊くと、リイナちゃんは「うんっ」と元気良く頷いた。
そして、リイナちゃんと今度こそお別れのときがきた。
案内所を出たところでお母さんはもう一度深く頭を下げた。
リイナちゃんはというと、今度は泣きはしなかったがやはり寂しそうに俯いてしまっていた。
「リイナちゃん。また今度遊ぼう」
「……今度っていつ?」
「リイナ、お兄さん困っちゃうでしょ」
お母さんに言われて下を向いたまま口を尖らせるリイナちゃん。
「同じ街に住んでいるんだ。絶対また会えるよ」
「……絶対?」
リイナちゃんは言いながらちょっと顔を上げた。
「うん。絶対」
トランクスが力強く頷く。
するとリイナちゃんはやっとカワイイ笑顔を見せてくれた。
――そんな二人を見ていて、ユメの胸はチクリと痛んだ。
……私も、トランクスとお別れするときが来るんだ。
そのとき私は、リイナちゃんみたいに、笑える……?
リイナちゃんは、見えなくなるまでずっと手を振り続けていた。
「ユメ?」
「……え?」
「大丈夫? 急に元気なくなった気がする」
トランクスに言われて、少し俯き加減だったユメは慌てて顏を上げる。
「あ、えっと……リイナちゃんがいなくなって、ちょっと寂しいなって……」
咄嗟にそう言ってしまった。
……本当は、少し違うのだけれど……。
「そうだね。オレもだよ」
トランクスが笑って続ける。
「残りの時間は二人で楽しもう」
……そうだ。折角のトランクスとのデートなんだ。
今は、余計なことは考えない……!
「うん!」
ユメは笑顔で頷いた。