第3章 二日目
あぁ、迷惑かけたくないのに……。それじゃなくてもお世話になってるのに……。
こういうとき、人はどんどん考えが暗くなっていくものだ。
……と、
「はいユメ。炭酸水買ってきたよ。きっとスッキリするから」
トランクスから笑顔で缶ジュースを手渡された。
その笑顔にまた胸が痛む。
「ありがとう……ございます」
「ユメ、言葉戻ってる」
「あ……」
クスクスと笑ってトランクスはユメの隣に腰を下ろした。
「ほら、飲んで」
言われて炭酸水を口にすると胃がすーっと冷たくなって、とても気持ちよかった。
「ムリしないでいいからね。オレも丁度、そろそろ休もうと思っていたところだったから」
そう言って気遣ってくれるトランクスに、
「ありがとう」
ユメは心からお礼を言った。
それから、しばらくふたりはベンチで休みながら前を通る人々を観察していた。
「それにしても人多いなぁ。子供とかちょっと気を抜いたら迷子になりそうだ」
「うん。大人でもはぐれちゃいそう……」
そうふたりが会話した、丁度そのときだった。
「うええぇぇぇん、ママぁぁ~~」
目の前で5歳くらいの女の子が、ひとり立ち止まって急に泣き出したのだ。
顏を見合わせるふたり。
トランクスがすぐに立ち上がって女の子に近寄る。
「どうしたの? ママとはぐれちゃった?」
女の子と同じ目の高さになるように、しゃがんで言うトランクス。
しゃくりあげながら女の子はトランクスを見た。
「ママとどこではぐれちゃったかわかる?」
ユメはものすごく優しい表情と口調のトランクスに、こんな時だというのに見とれてしまっていた。
首を大きく横に振る女の子。
トランクスは一瞬困った顔をして、
「君のお名前は?」
と訊ねた。
するとその女の子は小さく「リイナ」と答えた。
「じゃぁリイナちゃん、これからお兄ちゃん達とママを捜しに行こうか」
するとリイナちゃんはコクンと頷いた。
「と、いうことなんだけど、ユメもう歩ける?」
トランクスがユメの方を向いて心配そうに訊いた。
「うん。もう平気!」
言ってユメは立ち上がった。