第3章 二日目
「はい、恐怖症とかではないです……けど」
「じゃぁ、ちょっと我慢してね」
そう言うとトランクスは急にユメをひょいと横抱きにした。
え?
――え!?
えええぇぇぇぇ~!!?
目の前にいきなり、ドアップのトランクスの顔。
きゃあああぁぁぁぁぁ~!!
ユメの頭の中はパニック寸前……いや、完全にパニックを起こしていた。
「なっ、な……トラっ」
何か言いたくても言葉になってくれない。
トランクスの温もりがこんなに近くで感じられる。
そう思った瞬間、心臓が壊れるくらいに震えた。
「ごめん。この方が全然早く着くから」
そう聞こえたかと思うと、ユメは妙な感覚に襲われた。
それが無重力という感覚だとわかったのは、いきなり周りの風景が変貌したためだった。
住宅の屋根が足元を過ぎたかと思うと、次に目に入ったのは先ほど自分達がいた渋滞中の道路。
――舞空術!?
そう。ユメたちは上空に向って飛んでいた。
高度が上るにつれて耳がキーンとなる。
強い風が直接肌に当たる。
「ここまで来れば……。ユメ、大丈夫?」
随分高い所まで上ってきたようだ。
近くに雲があるし、下を見た途端、高所恐怖症というわけでもないのに眩暈がした。
「だ、大丈夫です……」
「これから遊園地の方角まで飛ぶから。危ないからちゃんと掴まってて」
掴まってて、って言ったって……!?
見るとすでにユメの手は無意識のうちにトランクスのシャツをしっかりと掴んでいた。
「そこより、首に手回してくれた方が安全かな」
く、首に手回すって……!?
顔を上げた瞬間、トランクスの顔が間近にあって即視線を外す。
――こ、これだけでも心臓に悪いのに、そんな恥ずかしいことできませ~ん!
ユメは無言でぶんぶん首を振ってシャツを強く掴んだ。
するとトランクスが頭のすぐ上で小さく笑った気がした。
「それでは、今度こそ遊園地までノンストップで向います」
トランクスがそう言った次の瞬間、すさまじい風圧がユメを襲った。
「きゃああぁぁ~!!」