第3章 二日目
途中、ユメは何度も景色を見るフリをして隣にいるトランクスの横顔を見つめた。
風になびく紫色の髪。
他愛もない話に微笑む端正な横顔。
ドキドキが、ずっと止まらなかった……。
――でも、快適な旅も間もなく終わる。
「すごい……ですね」
「覚悟はしてたけど、これほどとは……」
二人の乗った車は見事に渋滞にはまってしまった。
広い道路が同じ方に向かう車でひしめき合っている。
おそらく皆出来たばかりの遊園地に向かう車なのだろう。
すぐ隣の車から子供の騒ぐ声が聞こえてきた。
見ると全く動かない車に痺れをきらして、お母さんに文句を言っているようだった。
微笑ましい光景だったが、本当にこれでは遊園地にいつ着くことが出来るのかわからない。
太陽も、もうずいぶんと高くなってきている。
「着くの、お昼過ぎちゃいますかね……」
着いたらまず混まないうちにランチにする予定だったのだけれど……。
「このまま行ったら確実に過ぎるだろうね」
ユメは小さくため息をついた。
ずっとこうやってトランクスの隣にいられるのは嬉しいけれど、折角のデートなのにいきなり足止めされて何だか悲しかった。
……と、そのとき。
「……よし。降りよう」
「え?」
言うや否やトランクスはエンジンを止めてさっさと車から降りてしまった。
ユメも訳が分からないまま慌てて降りる。
トランクスが車に付いていたボタンを押すと、また小さな爆発が起こって車はカプセルに戻った。
「ト、トランクス……?」
「ユメ。ついて来て」
トランクスは周りの車からの視線を集めながら、動かない車と車の間を通って歩道の方に向かう。
ユメは、ただついて行くことしかできなかった。
歩道に出たふたりはそのまま更に住宅街の中に入っていく。
ユメはその間、もしかして遊園地は諦めようと言われるのではないかとビクビクしていた。
でも、
「ユメ、高い所平気?」
「へ?」
住宅街の人気のない小道に出たところでトランクスは振り向いて言った。