第2章 一日目の夜
トランクスは恥ずかしそうに一つ咳払いをしてから答えた。
「いません。……残念ながら」
よ、よかった~~!!
内心激しくホっとするユメ。
「というか、女の子と喋ること自体ほとんどないかな」
「うそっ!?」
ユメはトランクスの言葉に心底驚く。
「だってトランクス、すごくカッコイイのにっ!! ……あっ! い、いえ、そのっ……」
思わず言ってしまってから真っ赤になって口を押さえる。
「あはは。ありがとう」
トランクスもちょっと顔を赤くして言う。
ひぃ~! 私のバカァぁ~!!
恥ずかし過ぎてひたすら小さくなるユメ。――でも。
「みんな、怖がってオレに近づかないから」
……え?
トランクスの言葉に、ユメの思考は止まった。
ゆっくりと顏を上げてトランクスを見ると、彼は寂しそうに笑っていた。
「オレも怖がらせたら悪いと思って、あまり人には近づかないようにしてるしね」
ユメは言葉を失っていた。
何? ……どういうこと?
何を言っているの?
……トランクス?
頭の中が疑問符でいっぱいだった。
「だから、ユメはオレに対して普通に接してくれるから、すごく嬉しいんだ」
そう言って本当に嬉しそうに笑うトランクス。
「なんで……?」
ようやくユメの口から言葉が出てきた。
「なんで? ……なんで、みんな怖いって……」
「オレが、普通じゃない、強い力を持っているからだよ」
「――だ、だって、トランクスはその力で人造人間を倒してくれたのに……!」
だんだんと声が大きくなる。
心の中に何か、ぐちゃぐちゃとした感情が生まれていた。
強く握り締めた拳が小刻みに震える。
この感情は、怒りだろうか……?
「だからだよ。みんな人造人間たちの強い力を嫌って程見てきたからね。それを倒したオレを怖がっても不思議じゃない」
「だからって!! おかしいです! そんなのっ」
思わずガタンと椅子から立ち上がるユメ。
それはもはや叫び声になっていた。