第2章 一日目の夜
――と、そこへもうひとりの来訪者の注文を訊きに大五郎がやってきた。
『ご注文をどうぞ』
「じゃあ、オレはコーヒーで。よろしく、大五郎……っ」
言いながらまた吹き出すトランクス。
相当ツボだったみたいだ……。
結局、ユメまでつられて笑ってしまった。
そして当の大五郎はまた森の中へ戻って行ってしまった。
「そういえば、トランクスはどうしてここに……あ。もしかして私が起こしちゃいました?」
「いや、オレも起きてたんだよ。そしたらユメが部屋を出たのがわかってさ。なかなか戻ってこないから気になって来たってわけ」
「ほんと、すみません……」
「……やっぱり、家が気になる?」
トランクスが優しい目でユメに言った。
「え? ……あ。はい」
……そうだった。トランクスは私が家出したと思ってるんだよね……。
瞬間、この優しい人に嘘をついているということに胸が痛んだ。
「実はね、オレも昔家出したことがあるんだ」
「へ?」
突然のトランクスの告白に、思わず間抜けな声が出てしまった。
「確か12歳くらいの頃かな。ユメと同じ、やっぱり母さんと喧嘩してさ」
「え、えぇ~!? トランクスが!? ブルマさんと!?」
驚く。
二人が喧嘩をするなんて、想像できない。
「そう。だからユメの気持ちは良くわかっているつもりだよ」
「あ……」
「オレはそのとき、とある知り合いの人の家にお世話になったんだけどね」
そのとき、急にトランクスの笑顔が翳った気がした。
ユメはすぐにピンと来た。
知り合いの人とは、きっと悟飯のことだ。
早く、何か返さなければと焦るユメ。
きっと、今トランクスは悟飯のことを思い出してしまったのだと思うから。
そして、あの悲劇を……。
おそらくトランクスにとって一番辛い思い出のはずだ。
それをユメは痛いほどに知っているから。
「え……と、それで、トランクスはどのくらいで戻ったんですか?」
ユメは少し大きな声で訊いた。