第1章 一日目
と、そのとき、女の人の声がした。
「じゃあ、みんなによろしくね」
ここからでは声の主が見えない。
「はい。母さん」
ドキっ!
トランクスの発した声に、不覚にも胸が鳴る。
「か、母さんってことは、ブルマ?」
ユメは今すぐ飛び出していきたかったが、なぜか足が動いてくれない。
「えっと、このシーンは……」
見覚えがある。
ドラゴンボールのほとんどのシーンを覚えているはすぐに思い出すことができた。
おそらく、この時代の17号と18号を倒して、その報告にタイムマシンに乗って過去に行くところだ。
と、そこまで考えて、
「ちょっと待って……ってことは?」
ユメは気付く。
「これからセルと戦うんだ!!」
バっとあたりを見回す。
確かセルが過去に行くためにトランクスを殺そうと、どこかに隠れているはずだ。
とりあえず自分の近くにはいないことがわかって、ホッと胸をなでおろす。
「私、夢なのに何でこんなに緊張してるの。……でも」
何かがおかしい。
トランクスは今もなにやらブルマと話しているようなのだが……、
「……おかしいよ。セルのこと何にも知らないみたい……」
本当ならこの辺でトランクスが「そこにいるのはわかっているぞ、セル」と隠れているセルに向かって言うはず。
だが、今彼は普通にブルマと楽しそうに話をしている。
……嫌な予感がする。
ドラゴンボールのお話が大好きなだが、昔から一箇所だけ嫌いな部分がある。
それは、あるひとつの未来に、セルに殺されてしまったトランクスがいたこと。
そのトランクスは、やっと宿敵である人造人間を倒すことができ、やっと幸せな未来を掴んだはずだった。
それなのに、過去に報告に行くところをセルに不意をつかれ、その掴んだはずの未来を永遠に失ってしまったのだ。
そのトランクスのことを想うと、可哀想で、悔しくて、いつもは涙があふれた。
「これって、その場面なんじゃ……」
ユメは青くなる。
そんな、トランクスが死ぬところなんて、夢でも見たくない!
……丁度その時だった。
タイムマシンの影から何者かが飛び出した!
頭が真っ白になる。
「だめえぇぇぇ―――――!!」