第2章 一日目の夜
それに今眠ってしまったら、やはりこれは全部夢で、目が覚めたとき自分の部屋のベッドの上、ということも考えられる。
……それは、もっと嫌だ!
ユメは頭を振った。
自分でも矛盾しているとわかっている。
……考えるんじゃなかった。
眠ることが、急に怖くなってしまった。
しかしこの部屋には時間を潰すものが何もない。
――そうだ、あの部屋に行こう!
ユメは思いついてすぐにベッドから下りた。
“あの部屋”とはトランクスが家の中を案内してくれたときに少しだけ入った、リフレッシュルームのこと。
植物が生い茂り、空気が澄んでいて、まるでそこだけが深い森の中のようだった。
トランクスがいつでも使っていいと言っていたのを思い出したのだ。
夜中に人の家の中をウロウロとするのは抵抗があったが、ここでただじっと朝が来るのを待つのは今のユメには辛かった。
ユメは極力足音を立てないように注意しながら部屋を出て、トランクスの部屋の前を通過し、リフレッシュルームへと向かった。
そして、ドアに“リフレッシュルーム”と書かれた部屋に辿り着いた。
ドアの横に取り付けられたボタンを押すと、シュっと音を立ててドアが開く。
同時に部屋の中が明るくなり、川のせせらぎと鳥のさえずる音が聞こえてきた。
人が中に入ると自動的に部屋の機能が働くように出来ているようだ。
「ふわぁ~、いいなぁ~こういうの。すっごい落ち着く~!」
ユメはウキウキと中に入っていった。
そこには庭園に置くような可愛らしいテーブルと椅子が置かれていた。
ユメはその椅子に腰掛けて、まるでどこまでも続いているかのような森の奥を見つめる。
私の家にもこういう部屋欲しいなぁ~、などとムリなことを考えていると、視線の向こうから何かがやってくるのが見えた。
「な、何!? ロボット……?」
そう、それはどう見てもロボットだった。
背の高さはユメの腰くらい。
なかなか愛嬌のある形をしたそのロボットは、ユメの前まで来ると『ご注文をどうぞ』と、かわいらしい声を出した。