第1章 一日目
「――ちょ、ちょっと買物に行くところで、丁度通りかかったんですよ」
「そのわりには、手ぶらなのね」
ブルマのツッコミは容赦なかった。
うわぁ~ん! ブルマさん、するど過ぎます~~!
「え、え~っと……」
ユメが泣きそうになりながら次の言葉を探していると、
「母さん。ユメ困ってますよ。彼女には彼女の事情があるでしょうし。いいじゃないですか、そんなこと」
と、トランクスが横から助け舟を出してくれた。
トランクス~~っ!
心の中で大感謝するユメ。
「それより母さん、こんなことになっちゃいましたし、過……向こうに行くのは、また今度、日を改めてにしようと思います」
「そうね。じゃぁ、アレ閉まってこないと……」
「あとでオレが行ってきますよ」
完全に話がずれて、ほっとするユメ。
そうだ。トランクスは過去に行くところだったんだっけ……。
アレとはタイムマシンのことだろう。
しかし、これも知らないフリをしなくてはならない。
なんか、疲れるなぁ……。
ユメはトランクスたちの会話を聞きながら一人考える。
……本当に、私はどうなってしまうのだろうか。
もしこのまま、元の世界に戻れなかったら……。
スーっと背中が冷たくなった。
確かにここは何度も本で見てきた世界。だがそこでの生き方なんてユメにわかるわけがない。
お金もない。持ち物は今が身に付けている服と、腕時計だけ。
このあとこの家を出たら、私には行くところがない……。
――いきなり現実に引き戻された気がした。
「ユメ?」
「……え!?」
急に呼ばれてビクリとする。
いつの間にかトランクスが心配そうにユメを見ていた。
「やっぱり、このあと何か予定あります?」
「!」
言われて、自分が腕時計をジッと見つめていたことに気がついた。
「あ、いえ! 違います! ちょっと、ボーっとしてただけで」
「そう、ですか……?」
「私ってすぐボーっとしちゃうのクセなんですよ! よく友達とかに怒られます。あははっ」
ユメが笑いながら言うと、トランクスもホっとしたように笑った。