第2章 後編
「ねぇ、トランクス? まだ仕事終わってないんでしょ?」
「んー」
「じゃあ早くやらないと、いつまでたっても終わらないよ?」
ユメは恥ずかしそうにすぐ背後にいるトランクスに言う。
今ユメはソファの上で後ろからトランクスに抱きしめられていた。
ちなみに顔はユメの肩の上。
ドキドキしっぱなしで落ち着かない。
「あ~、落ち着く」
トランクスがユメの気持ちとは真逆なことを呟いた。
「朝からずっと働き詰めなんだ。もう少し休ませて」
こういう、ときどき見せてくれる甘えたところも好き……だけど。
「ダメ! もう十分休んだでしょ! 早く片付けちゃってください、社長!!」
そう言って、ユメは問答無用で立ち上がった。
支えを無くしたトランクスがガックリとうなだれる。
「あぁ~、オレやっぱり社長なんて引き受けなければ良かった……」
「何言ってんの! まだケーキも残ってるし、食べながらがんばって! そしたら……」
また甘えていいから……って言いそうになってユメは慌てて口をつぐんだ。
「そしたら?」
トランクスが面白がるような目でユメを見上げる。
「なっ、何でもないっ!」
赤くなりながらそっぽ向くとトランクスのクスクスという笑い声が聞こえた。
「よっし、じゃぁ続き始めますか!」
「……何か手伝うことある?」
「いいよ。ユメは居てくれるだけで」
「でも……」
「いいんだ。折角の誕生日なのに書類ばっか見ていてウンザリしてるんだ。ユメが居てくれれば目の保養になる」
「!」
「それに、終わったあとご褒美があると思うとがんばれるしね」
「なっ、何にもない!」
ユメの慌てようにトランクスは楽しそうに笑った。
……結局、仕事が全て片付いたのはそれから3時間後。
その間、ユメは仕事をしているトランクスをずっと見つめていた。
彼がそばに居てくれる。それだけでユメは十分に幸せだった。
今日は愛しの彼の誕生日。
一緒に迎えるはじめての誕生日。
これからもずっと、そばでお祝いできたらいいな。――そう思うユメだった。
END.