第1章 前編
今日は愛しの彼の誕生日。
pm6時。
ユメは一生懸命作ったケーキを持って待ち合わせ場所に一人立っていた。
付き合って初めて迎える彼の誕生日をユメは何週間も前から楽しみにしていた。
彼の名前はトランクス。
あのカプセルコーポレーションの若社長、その人である。
性格も良くて、強くて、しかもカッコイイ。
ライバルがたくさんいる中、未だにトランクスが自分を選んでくれたことを夢のように思っているユメであった。
でも、トランクスはいつもとにかく忙しい。
一日中デートなんてこと今まで数えるほどしかない。
今日だって一年に一度しかない誕生日だというのに待ち合わせはこんな時間だ。
「うーん。遅いなぁ」
約束の時間から15分を過ぎて、だんだんと不安になってくる。
いつもなら文字通り飛んでくるのに……。
と、その時ユメの携帯電話が鳴った。
着信音はトランクス専用のもの。
「トランクス? どうし……」
「ごめん! ユメ、実は緊急事態があって、今日家を抜け出せそうにないんだ」
ガーーン……。
「しょ、しょうがないよ……」
「それで、ユメにこっちに来て欲しいんだ」
「え!?」
トランクスの言葉に驚く。
付き合って半年近く経つけれど彼の会社、カプセルコーポレーションに行ったことは一度もない。
「受付に言ってくれたらオレすぐ下りていくから。ホントごめん!」
そこで電話はプツリと切れた。
「…………」
彼らしくない一方的な通話に本当に何か緊急事態が起こっているのだとわかる。
でも……。
「行くしか、ないよね……」
折角作ったケーキを無駄にしたくないし、何より……トランクスに会いたい。
ユメは会社のある方へと足を向けた。