第9章 波多野 ルーム
~ 時多side ~
担当医でもないのに 、毎日俺を気にかけてくれる波多野先生 。
優しい表情 、優しい声で 、入院中の俺のイライラを 解消してくれるんだ 。
波「 何かあったら 、すぐに呼んでくださいね 」
先生はそう言って 、少し寂しげな顔で戻っていく 。
あと3日程で退院できると決まったある日 。
俺は 夜中に具合が悪くなり 、ナースコールを押した 。
ナ「 時多さーん 、大丈夫ですかー ? 」
病室に入って来たのは 、波多野先生ではなく 、ナースと俺の担当医 。
具合が悪いながらも 、波多野先生じゃないことにがっかりする 。
「 すいません 、具合 ... 悪くて ... 」
担「 もう大丈夫ですからね~ 」
先生達の的確な処置で 、症状は落ち着き 、眠りについた 。
次の日の朝 、目を覚ますと 、誰かの気配を感じた 。
「 ... 波多野 ... 先生 ... ? 」
波「 よかった ...!」
担当医から話を聞いて 、今までそばにいてくれていたらしい 。
波「 気分は どうですか ? 」
「 もう大丈夫ですよ 」
それからも 、先生はずっと俺の横に着いていた 。
「 あ 、先生 、俺もう退院できることになりましたよ 」
そう言うと 、先生の表情が少し曇ったように見えた 。
波「 ... そっか!おめでとう!」
でもすぐにいつもの明るい表情でそう言ってくれる 。
... 俺の思い過ごし ?
医者 だもんな ... 、患者が退院していくのが 嬉しいことなんだよな ...
「 ありがとうございます 」
波「 ... じゃあ 、戻りますね ... 」
いや 、違う ... 。本気でそう思ってくれてる 。
「 先生!」
病室の出口に向かう先生を 、思わず引き止めた 。
「 俺 ... 、まだ先生といたい ... 」
先生に 、しかも男に ... 、こんなこと言うなんて 、想像もつかなかった 。