好きになったっていいじゃない【アイナナ】R18*完結*
第4章 重なる声
あれから何回歌ったんだろう。
数えきれないくらいに歌った。
音だって外してない、声だってひっくり返っていない。
それなのに天は何度も歌い直しを要求してくる。
私には理由も言わないで。
ただため息と「最初からお願いします」の言葉を繰り返すだけ。
私のどこが悪いの?
ちゃんと悪いところを言ってほしい。
本当は私から聞けばいいんだろうけど……私だって一応はプロ。自分なりに完璧に歌えていると思っている。
だから、どこが気に入らないのか聞く事が出来ない。
「ねぇ……」
「……はい」
「どこがダメなのか……わからないの?」
わかりませんって言える雰囲気じゃない。
天が怒っているなら私だって怒れる。
「どこがダメなの?!」って。
でも天は怒っていない
ただ、私に対して失望したかのような表情で見つめてくるだけ。
それが悲しくて悔しくて涙がでそうになってしまう。
天に失望されたくない
出来ない子だって思われたくない。
「歌っている時、何を考えているの?」
「え……?」
「音を外さないようにとか?」
「うん」
「ねぇ、」
「はい」
「キミはプロだよね?プロなら音を外さないのは当たり前の事。ボクが求めているのはそんな物じゃない」
天が私に求めている物?
「キミならきっと出来ると思ったんだけど……どうやら勘違いだったみたいだね。残念だよ」
一体なにを求めているの?
私に足りない物ってなによ