第3章 緋守高校とゲヴァルト
「何これ…」
「これは」
莉子がつぶやいた。
「…精霊」
「ちょっと莉子ちゃん?!」
莉子は悲鳴をあげた男子生徒の肩にいた生き物が精霊と分かり、彼のもとへ言った。そして千秋も追った。
「君大丈夫?」
「お前こいつが見えるのか?ならさっさと取ってくれ!早くしろ!」
荒らげた声で一瞬冷めた空気に包まれた。莉子を男は睨むように見つめて。
「あのさお前…」
千秋の拳は彼の頬まで手が伸びた。そして倒れ込んだ男の襟をガッとつかみ上げた。
「お前を助けようとしてるやつに向かってその言い方はねぇんじゃねぇの?」
「千秋!?」
千秋は右手で彼の左手首を、左手で莉子の右手首を握って廊下を走った。
「千秋一体どこへ…ってそういうことか!」
莉子は千秋の考えを理解した。千秋は莉子と彼を引っ張っていく。そして着いた先は第一会議室と書かれた扉の前。
「ここで何しようってんだよ?」
彼は千秋に聞いた。
「ここに来ればその精霊、取れる」
「は?」
「あんたゲヴァルトマスターでしょ?ならここに来ればそいつは消える」
扉を見つめながら莉子は彼に向かって言った。
「それは約束を守らないゲヴァルトマスターへの罰だから」
そして開いた扉の向こうから言葉にできないほどの威圧感を感じとれた。
「遅かったじゃないか紺野君と…東条君」
足元を見ながら扉を開いた莉子は声のした方を見た。
「あんたは…」
「僕は常守学園生徒会長成崎逸貴(なるさきいつき)だ。よろしく。まぁ空いてる席に座りな」
千秋は彼を成崎の前に放りだし莉子と言われたままに空席に行った。千秋は座ったが、莉子はその場で成崎に言った。
「その精霊あんたがやったんでしょ?」
「気づいてたか…」
成崎はブレザーの内ポケットから小さな箱を取り出した。
「これは精霊BOXダーク。悪い精霊を召喚できるゲヴァルトアイテムさ」
莉子は鼻で笑いながら言った。
「まさか実力はそんなものじゃないですよね?」
「ははっ…なわけないだろ」
「こいつらやばいな…」
あまりの会話の凄さに息を呑む千秋。そんな空気で始まった会議。
「さぁ始めようとしようか。ゲヴァルトマスター会議を!」