第3章 Trick or Treat(降谷零)
急過ぎてむせてしまった恥ずかしい……
わたわたしながらも自分の支度を済ませ、降谷さんを追いかける。
助手席……乗っていいのかな。
好き好き言うのと行動するのは私にとって別なの。
柄にもなくちょっと緊張して止まってしまう。
「何してるんだ、早く乗れ」
ぶっきらぼうな言い方の割に助手席をあけてエスコートしてくれる降谷さん。
「お…おじゃまします」
んんんんなんなの一々かっこよすぎて……すき……
やっぱり慣れてるのかな……
そんな事を思いながらチラッと隣を見ると、
真剣な顔で運転する彼。横顔整いすぎて最早怒りたい……あれ?何だか降谷さんの顔が赤くなってきた……?
「……そんなに見ても何もでないぞ」
気がつけば食い入る様に見ていたらしい。ハッと我に返り、正面をむく。……うーん、私の顔も何だか熱い……
つかの間の沈黙の後、降谷さんが口を開いた。
「やけに大人しいな。先程までの威勢はどうしたんだ」
「え、あ、いや……なんで送って下さるのかなって……」
「……、いつも深夜まで残ってるだろ。」
「あ、はい」
降谷さんとは机離れてるし、気づいてないと思ってたのに……
「それに加えて鼻声だし顔も少し赤い。……皆に気づかれないように振る舞っていた様だが。休める所で休んでいかないと倒れるぞ。」
と、頭をポンと撫でられた。
ああもう本当にうちの上司カッコよすぎる!!!
こういう僅かな事に気づいちゃう所に私は……いや、女は惚れるんですよ!?分かってるんですか!?(逆ギレ)
「さ、着いたぞ」
気がつけば家の前。ナビ通りにきちんと家まで送って頂いてしまった……
「ありがとうございます」
そう言って助手席から降りようとした瞬間ーー
いきなりグイッと腕をひかれ、私は体勢を崩し降谷さんの胸元へ顔を埋めた。
……あ、この匂い知ってる……私の大好きな降谷さんの香り……
……ってそうじゃない!!!
「ああああああの!?!?降谷さんんんん!?ど、どうしたんですか!?」
パッと体制を整え、助手席に座り直す。が、少々恥ずかしいので目が合わせられない……
「Trick or Treat」
「へ」
「だから、Trick or Treat」
にやにやした顔で右手を差し出された。