第3章 Trick or Treat(降谷零)
「なんでお兄さんがお礼を言うの?」
「君がこの子を守ろうとしたからだよ」
「でも、お兄さんの知ってる子じゃないでしょ」
「それは君にも言える事だよ。なんで、知らない子の為に危ないことをしたんだい?」
お兄さんの知らない男の子なのに、助けようとした事に対してお礼を言われたのが疑問だったが、自分にも言える事だとその時気づいた。私は少し考えてから思いを伝えた。
「目の前で危ない目に合ってる子がいたら助けなくちゃと思って」
それを聞いた彼は目をぱちくりさせてフッと笑った。
「……君は素直でいい子だね。警察にいて欲しい人材だ。」
「お兄さん、警察なの?」
「まあ……そうなるかな」
「お名前なんていうの?」
「それは秘密「降谷さーん!こんな所にいたんですか!」
ふるやさんというのか。
本人からは聞けなかったが後ろから走ってくる眼鏡の男性のお陰で名前が分かった。
するとふるやさんは、ゲッとした顔で周囲の人に軽くお辞儀をした後早々に男性の元へ向かった。
この出会いをきっかけに、私は警察への道を決めた。
記憶の中にいる彼、ふるやさんに会う為に。そして、小学生の時に守れなかった思いを糧に今度は私自身が人々を守れる様に。
「……い」
「……おい!!!!!」
あ、やばい昔の思い出に浸りすぎた。
「どうしたいきなりぼーっとして……お菓子ならそこの机に置いといたから持っていけ」
「えっなんでお菓子あるんですかイタズラ出来ないじゃないですか」
「お前本当に理不尽だな」
まさかお菓子を持ってるとは……とチラッと見てみると薬用のど飴が一つ置いてあった。
「……これはお菓子なんですか?」
「いらないなら返せ」
「いりますいります!!ありがとうございます降谷さん!!」
降谷さんの伸びてきた手を阻止して、急いで飴を手に取り舐める。
……蜂蜜味だったのか……降谷さんカワイイの舐めてるな……
と、味わって舐めていると後ろから少し不機嫌な降谷さんの声が聞こえてくる。
「……いつまでそこにいるつもりだ。帰るぞ。送ってやるから早く支度しろ」
「ごほっ」
え!?送ってくれる!?!?なんで!?!?