第2章 素敵な帰り道(安室透)
「え、いや、大丈夫ですよ。それに安室さんがいないと梓さん困っちゃいますよ?」
「いや、でも……」
「本当に大丈夫ですから!安室さんは心配しすぎですよ~」
安室の言葉を遮り店を出ていく。
と、同時に客が入ってきたので留まらなければ行けなくなってしまった。
気難しい顔で彼女を見送りつつ、安室は客への対応をするのであった。
「もー、安室さんってば本当に心配性……」
薄暗くなった帰り道、そんな事をぼやきながら1人でてくてく帰る。
今日は蘭と園子にはめられたけど安室さんに会えてよかった……
安室さんってポアロで働く以外にも探偵やったり……他にもバイトやってるって聞いた。実際ポアロに居る日も少ないみたいだし。
……でも、私がポアロに行く日は必ず会える。これってもしかして運命!?
にまにましながら足取りがご機嫌になって帰る。
すると、後ろからいきなり声をかけられた。
「お嬢ちゃん、そんなに笑顔で何かいい事でもあったのかい?」
その声に反応してくるっと振り向くと、サラリーマンだろうか、スーツを着た見知らぬ男が立っていた。
「……あの、どちらさまで……っ!!!」
突然話しかけてきた男に警戒しながらも、じろじろと見ていたら、手元に見える刃物を確認してしまい、背筋が凍りつく。
「……ああ、これを見てしまったのか。大丈夫、俺はちょっとだけ可愛い子とあそびたいだけなんだよ……大人しくしてたら怪我しないからね……」
そう言ってじりじりと近づき私の手首を握る。
「いや……っ!!はなして!!!」
これはまずい。殺されるかもしれない。
小さなパワーで握られていた手に蹴りを食らわせ、一瞬手首を離した隙に全速力で逃げる。
「……この女……!大人しくしてりゃいいものを!」
当然相手も追いかけてくる。私だって生死がかかってるのだから一生懸命に逃げる。
しかし、待ち構えていたのは行き止まり。
ここに来てこの土地の無知さに絶望をする。
「もう逃げられないね……言うこと聞かないいけない子にはお仕置きが必要かな…?」
こちらを見て笑っている男、行き止まりの壁……もう逃げられない……
死を覚悟し、腰が抜けてしゃがみ目をつぶる私。
男が刃物を握りしめていた手を強め、こちらを見つめて振りかざそうとした瞬間ー