第2章 素敵な帰り道(安室透)
「やっぱり安室さんのサンドイッチは世界一おいしい………………」
もぐもぐと頬張りながらそう伝えると、笑いながら「大袈裟ですよ」と洗い物を片付けながら答える安室さん。
つかの間の沈黙のあと、安室さんが話しを切り出した。
「……そういえば、君が初めてポアロに来た時も2人っきりでしたね」
「あ、そうですね……私が帝丹高校に転校してきて、すぐに蘭たちと仲良くなってポアロに来たのに、用事があるの忘れてたとかで私だけ置いてかれちゃって……」
安室さんがサービスでくれたオレンジジュースを飲みながら懐かしさにフッと微笑む
「あのときはびっくりしましたよ。バイト先に来たら女の子が寂しそうに一人でいるんですから」
「だって転校してきて間もないのに置いてけぼりですよ……寂しくもなりますよ……」
「……寂しくなって、声をかけた僕に告白したんですか?」
ブフッ!!!
安室の突然の衝撃的な言葉には勢いよくオレンジジュースを吹き出した。
「おや、大丈夫ですか?」
微笑みながら布巾とティッシュを差し出す安室さん。
これは確信犯の微笑みだ……!
「あああのですね、あれは本当違うんです!いや、違くはない……いや、違うんです!!」
そう。蘭と園子には言ってないが実は私は安室さんに1度告白をしている。
……いや、ついしてしまった というべきであろうか。
見知らぬ土地で、初めてのお客様にはサービスです なんてデザートを作ってくれたイケメンな店員さんを見たら思わず告白しちゃいませんか!?
まあしないと思いますけど!!私だってそれこそする気はなかった。だからつい口から零れてしまっただけなのだ。
ああ、この人優しい……しかも料理も出来るんだ………イケメンだし……「好き…………」
って最後だけ言葉になっただけなんだ!!
オロオロし始めた私を見て「すみません、少々からかいすぎました」と微笑む安室さん。
「そ、そうやってすぐ子供扱いして……!!」
口とテーブルを急いで拭き、安室さんに返す私。
なんだか照れくさくなってきたし、ご飯も食べ終わったので帰り支度を始める。
「……ごちそうさまでした、相変わらず美味しかったです。また来ますね」
そう言ってお金をレジに出し、扉に手をかける。
「あ、待ってくださいさん、送ります」