第5章 試験前に…… 参
「ど、如何でしょうか……」
「か、可愛い! とてもお似合いですわ!」
おずおずとカーテンを開けた途端、ナオミさんに抱き付かれた。
と、同時に谷崎さんがいない事に気が付いた。
「あの、谷崎さんは……?」
「あっ兄様。着れましたー?」
ふと隣の試着室を見てみると誰かが使っているのか、カーテンが閉まっていた。
「う、うん。今開けるね」
中から声が聞こえたかと思うと、其処から谷崎さんが出てきた。
(谷崎さんも試着してたんだ)
ちらりと谷崎さんの服装を見ると、先程までとは雰囲気ががらりと変わっていた。
パリッと張ったシャツに紫色のリボンタイ、灰色のベストに黒いジャケットとズボンを見に纏っていた。
とても良く似合っていた、と言うよりも。
「かっこいい……」
「へっ」
思わず声に出てしまう程、格好良かった。
「あっすみません! さっきまでと全然雰囲気が変わってて、谷崎さんすらっとしてるしそういうスーツも似合ってるなと思って……!」
本心を云っているはずなのに、顔がどんどん火照っていくのが分かった。
「えと、ありがとう、ひなたちゃん。あまりこういう服着ないから凄く嬉しい」
照れ臭そうに谷崎さんがはにかむ。
「それに、ひなたちゃんも凄く似合ッてる。可愛いよ」
「……! あ、ありがとうございます!」
まさか褒めてもらえるとは思わず、更に顔が火照ってしまった。
しばらく何も云えずにいると、
「あらぁ〜、なんだかお二人、良い雰囲気ですわね」
とニヤニヤしたナオミさんが云ってきた。
「え! そ、そんなんじゃ無いですよ!」
「そッ、そうだよナオミ! それにひなたちゃんに迷惑だろッ?」
二人して慌てて弁解するのを見ても、ナオミさんはまだ笑ったままだ。
「まぁ、如何かしらね〜、ふふ」
「もう! ごめんね、ナオミが」
「いえっ、大丈夫です! こちらこそ色々すみません……とりあえず着替えましょうか」
「そうだね」
ドキドキと高鳴る胸を抑えつつ、試着室へ戻った。
(うぅ、恥ずかしい……でも本当谷崎さん似合ってたな。凄く良いお兄さんって感じ)
そう、だから絶対違う。
どうにか念じて顔の赤みを抑えると、私はお店から出た。