第3章 試験前に…… 壱
「早速試験の事だけど。丁度良い依頼があってね、それが無事にこなせたら合格。いいかな?」
「は、はい」
太宰さんは机の中から書類を幾つか取り出すと、それを捲り説明した。
依頼の内容はこうだ。
最近、危険薬物が陰で流通しているらしい。
そこで、その取引現場を押さえ捕まえて欲しいとのこと。
取引相手__この場合は犯人に当たるだろうか__は、医学関係者のようで薬を持ち出すのも不審がられる事はなく、既に50以上ものの薬物が出回っているそうだ。
「いきなり犯人逮捕の依頼なんて大丈夫でしょうか……」
そう不安げに云ってくれたのは中島さんだった。
正直、私も同じ気持ちだった。
異能者といえども、犯罪者相手になんて使った事がない。
「なぁに、流石に一人では行かせないよ。谷崎君とナオミちゃんに同行して貰うから」
太宰さんが奥にいた男女二人を見やると、橙色の髪の少年と長く艶やかな黒髪の少女が、此方へ来て挨拶をしてくれた。
「ええと、ボクは谷崎です。宜しくお願いします」
「ナオミですわ。宜しくお願いしますわね」
「私は富永ひなたです。宜しくお願いします」
私はほっと胸を撫で下ろした。
仮にも此処は武装探偵社。
怖い人が居ても可笑しくない、と思っていた矢先、二人共優しそうで安心した。
___ただ、谷崎さんとナオミさんの距離が近いような……?
(二人は恋人同士なのかな……?)