第6章 六話
………。
関係ない。巻き込まれたくない。相手は教師だ。
「………離してください。」
「…なら、突き飛ばして。」
突きとばせない…と思ってるからワザと言ってるんだと思う…。
卑怯な人。そう思った。そんな人に関わりたくもない。
頭では分かってる。
………。
思えばこの時、もう既に傾きかけていたんだと、思う。
「…私もアナタを癒してあげる。」
呟いたその言葉が何故か繰り返し再生されてるように感じた。
…俺は別に、美樹や一ノ瀬との行為に不満を思ったことはない。相手も俺も気持ちよくなれてるし…。
だからこの言葉の意味が最初は分からなかった。
なので知った時はビックリしたのだ。
俺も少なからず変わったのかもしれない。
「…ああっ!あんっ!あん!はああっ…!」
上に乗って激しく腰を振る一ノ瀬。身体も綺麗だし、別に俺と相性が悪い訳じゃない。
なのに、たかだか先生とはあの日限りだったのに、その時の行為と比べてしまった。先生とした時も確かに比べた。なのにその感じが大きく違った。
…そう。満たされない。
いくら一ノ瀬がイッても、俺自身が欲を吐き出しても、何故か満たされなかった。
…別に満足はしていたのに。
確かに性技は先生が上手い。でもそれだけでこうも変わってしまうのだろうか…。
お互いに絶頂した後、一ノ瀬は気持ち良さそうな、満足そうな表情でベットに沈む。でも俺はただ疲れて横になった。
なんでこんなにも変わったのだろう。
ただ疲れただけで、何も満たされない。
”癒してあげる”
その言葉が頭から離れない。
……先生にも…こういったことがあったのだろうか。
そして気づけば先生を重ねていた。美樹と一ノ瀬とするときは…。
……バカバカしい。そんなことをしても何にもならないのに…。
自分がおかしくなっているみたいで嫌気がさした。
これならいっそ、しないほうがいいんじゃないかと思う時もあった。
………。
そしてそんな日々が続いたころ、放課後、俺は保健室の前にいた。