Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第1章 マイヒーロー《日向 翔陽》
そして、次の日の放課後。荷物を持って、迷わず第2体育館に直行する。体育館に着くと、日向君はもう着替えた後だった。
『ひーなーたー君!』
「あ、蒼井さん!」
『今日からよろしくお願いします!』
「うんっ、カッコよく描いてな!」
日向君の期待通りに頑張らなくちゃ。そう気合いを入れて、私はラフ画用のスケッチブックを開いた。
今日は特に動きを入れず、そのままの素材としての日向君を描いた。手足や体のバランスなんかを念入りに描いていく。
日向君以外の男子も観察していると、2人の先輩がこそこそと話しているのが目に入った。
「おい、ノヤっさん」
「何事だ、龍よ」
「何やら見掛けない後輩女子がいる」
「ど、どこだ!?」
「あそこ、ほら、あの壁際の」
「ほーら、2人とも、手が動いてないべ!」
「「スンマセンッ!」」
注意の声に坊主の人と、小柄な人が慌てて練習に戻る。私のことやっぱり気になるよね。休憩時間になったところで、日向君に声を掛けた。
『日向君、お疲れさま』
「おう、蒼井さんも。描けた?」
『ううん、全然。今日は特に下書きの下書きの下書きみたいな感じ』
「だいぶ下書きだな!」
ニシシと日向君が笑う。私も微笑んで、気になっていたことを訊いた。
『バレー部の部長さんて誰かな?』
「大地さんならそこにいるけど…」
日向君の指差す方には、現代文の武田先生と話す一人の男子の姿。遠目からでも分かるくらい、何だかしっかりしてそうな人。"大地さん"という部長さんに挨拶するべく、私は向かった。
澤村先輩―名前で呼ぶのは気が引けたから―は、私がここに出入りすることを快く了承してくれた。
よし、許可も取れたことだし、明日からも頑張って描いていこう。それから2週間、第2体育館に入り浸る日々が続いた。