Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第36章 ★私の彼氏は狼君。《京谷 賢太郎》
ガラリ、と体育館の引き戸を開けると、中にいた全員の耳目が集まる。私の来訪にいち早く気付いた及川は猛ダッシュ。
「おぉー、愛しの海宙ちゃーん!」
『あ、岩泉やっほー。元気?』
「ハイ、華麗なまでのガン無視ー!」
「及川キメェ」
「及川ウゼェ」
「及川死んどけ」
「ハイ、三拍子揃ってるー!」
及川に3年は辛辣な一言。それに反応する及川はもっとうるさい。まったく、どうしてこう、男バレはいつ来ても賑やかなんだろうか。苦笑しつつ、及川の手綱を握るのに苦労する岩泉を労う。
『岩サマ、お疲れさまです』
「やめれや女バレキャプテン」
『元、だけどねぇ』
私がキャプテンをやって日々は、つい昨日のように思い出せる。毎日部活に明け暮れて、インハイでは惜しくも準決勝で敗れた。それでも、3年間やって良かったと思える部活だった。
『男バレは3年も残るんだもんね~』
「おう。で、用事ってなんだ?」
あぁ、そうだった。と私が口を開こうとしたとき、後ろからギュッと抱きしめられる。彼かな?と思ったけど、匂いが違う。
『…及川、キサマか』
「なぁに、ハニー?」
『え、ナニナニ、キモ、キチガイ?』
「え、仮にも元カレにひどくね!?」
『"元"だからねぇ…』
容赦なくずけずけ言う私に、岩サマ、もとい岩泉含む3年は爆笑。1年の国見にまで笑われる及川、なんか、ウケる。
離れてくれそうにもないので、しばらく及川に抱き付かれたままでいると、2年たちが片付け戻ってきた。
「おーい、矢巾ー渡ー狂犬ちゃーん!」
『あ、賢太郎…ちょ、及川じゃま!』
「えぇ、どうしよっかな~?」
『ウッザい!じゃま!どいて…ってば!』
ホールドしてくる及川の腕をなんとか振りほどき、彼、もとい京谷賢太郎の元へと走る。自分の足に躓いて危うくコケそうになった私を、賢太郎は片手で難なく受け止める。
『さすが、ナイスキャッ…っん!?』
褒めようとした言葉は、賢太郎の口に塞がれて音にならなかった。