Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第34章 迷子の恋心《白布 賢二郎》
初めて見る表情に、今度は私が驚く。それから白布が頬をポリポリと掻いた。
「まさか、先輩が言うと思いませんでした」
『うん、私もさっきまでこんな展開は予測してなかったよ。瀬見が、後押ししてくれたの』
「瀬見さんが?」
うん、と頷く。それからさっきあったことを話すと、白布はバレてたんだな、と苦笑。
「瀬見さんは鋭いから、俺が先輩のこと好きだったのも気付いてたろうな」
『うん…え、私のこと好きだったの!?』
「じゃなかったら、あんなにちょっかい掛けないですよ、ふつー」
少し拗ねたように、白布は口を尖らせる。それから、先輩は鈍感すぎですから、といつもの笑みを浮かべる。
『…かわいい』
「は?」
『いや、なんか、白布かわいいね』
「男にかわいいって、ふざけてんですか?」
先輩の方が、断然かわいいから。白布はそう言うと、今度は私の唇にキスをした。ビクッとして離れようとすると、首の後ろと腰をホールドされて、身動きがとれない。
ここ、人ん家なのに。誰かに見られたら、という不安と、もう少し、という気持ちを天秤にかける。もう少し、に傾いた私は、しばらくの間キスを受け止めていた。
『っはぁ、白布…///』
真っ赤に鳴りながら見上げると、ニヤリと白布は笑い、それから鼻の頭をつんとつつく。
「ホラ、先輩の方がかわいかった」
『う、一本とられました…』
少し身を離して、顔を見合わせて2人で笑う。そして白布は、私をもう一度抱きしめた。
「先輩、いえ、海宙」
『っひゃい!』
「俺と付き合ってくれるよね?」
『ふふっ、しょーがないから、付き合ってあげるね。えーと、賢二郎?』
素直じゃない白布に、私も同じように名前で呼んで返す。それからにっこり笑うと、なぜにか白布は赤面した。
『あれ、賢二郎?』
「いきなり名前とか笑顔とか、反則…っ///」
初めて見る、白布の本当に照れた顔。もう一度かわいい、と呟く。すると不意打ちで唇が降ってくる。ほっぺに、おでこに、ちゅ。
『ふふ、やっぱりかわいいよ』
「うるさい…///」
かわいい、かわいくない、と言い合いながら、私たちは手を繋ぎ、牛島の部屋へと戻るのだった。
END.