Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第34章 迷子の恋心《白布 賢二郎》
ダダダダッと階段を駆け登り、牛島の部屋のドアを少し乱暴に開ける。
「うっわ、蒼井!うるさいよ!」
「ごめん天童黙って!」
大袈裟に騒ぎ立てる天童を一蹴し、私はつかつかと白布に歩み寄る。そしてスマホをいじる白布の腕を掴んだ。
「は、先輩?」
怪訝に見上げる白布とバッチリ目が合う。今ならまだ間に合う、どうにかごまかせる。
でももう、気付いちゃったんだ。
私の迷子、直ったんだ。
何を考えているか分からない双眸をひたと見詰め、息を吸う。そして、言う。
『お願い白布、話があるの。だから来て』
「なんのですか?」
『スゴく、スッゴく大事な話!』
「だからなんの?」
あぁもう、どうして君は動くのをそんなに渋るんだよ!なかなか動こうとしない白布に少しムッとして、グイッと腕を引き立ち上がらせる。そしてそのまま歩き出す。
「え、ちょ、先輩!?」
「蒼井ドコ行くの?」
『ごめん、すぐ戻るから!』
白布の手を握り、廊下を駆ける。もう、後戻りはできないんだ。突き当たり、袋小路のそこで、白布は私の腕を振りほどいた。
「だから、なんなんですか!」
『白布!』
イライラと言う白布に、もっと大きな声で言う。強い語気に白布が息を飲むのが聞こえた。
『…1回しか言わない。だから、聞いてて』
「はい…」
どうしよう、なんで、今頃緊張するの。目線を下にして唇を噛む。白布が待っているのが分かる。早く、言わなきゃ。
『白布、私…』
口を開いて一歩踏み出す。と、自分の足に躓いて前によろける。
『う、わっ…!』
「ちょ…っ!」
どさり、と倒れた先には白布。図らずも、抱き付いて支えてもらう形になる。
「先輩、だからどうしt…」
『好きっ!』
え、と上で白布の呟くのが聞こえる。でもそんなの構わずに、自分の気持ちを吐き出す。
『瀬見じゃなくて、白布だったの、私の好きな人。ずっと、勘違いしてたの。白布のことが頭から離れないの。ねぇ、好きなの…』
ぎゅうぅっと白布に抱き付くと、背中をあやすようにトントンと撫でられる。ちらりと目線を上にすると、少しだけ照れたように笑う白布が、そこにはいた。